コナラ

学名 Quercus serrata
別名 ナラ、ハハソ、ホウソ
小楢 分類 ブナ科コナラ属 (落葉高木)
小さいナラの意。「ナラ」については、@葉が広く平らなさまを「ならす」とした、A冬、枝に残った葉を、風が吹き鳴らす木とした、B若葉の軟らかいさまを「なよらか」とした、などの説あり。 原産・分布 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国
神奈川県 全域に分布。丹沢の最上部を除ききわめて普通に生える。
用途 公園樹、建築・器具材、薪炭、シイタケ原木
日当たりの良い山野に、普通に見られる。かつては薪炭材として、里山の代表樹種だった。里山では、コナラ・クヌギなどの薪炭材だけを、10〜20年周期で萌芽更新させていた。薪炭材を使わない今、関東地方では、放置された里山がシラカシなどの照葉樹林に代わりつつある。 新緑の林

上野原市
秋山
130505
樹皮は灰黒色で、縦に不規則な裂け目がある。クヌギの方が、裂け目は深く、コナラは表面の灰色の部分が残る。
★食★シロスジカミキリ、ミヤマカミキリなど
★樹液★オオムラサキゴマダラチョウキタテハ、カブトムシ


所沢
011201
コナラ幹
葉は互生で、葉身は倒卵形、あるいは倒卵状楕円形で有柄。縁には尖った鋸歯がある。形はナラの仲間独特で、その中では最も小さい。ミズナラは、葉柄がほとんど無いので区別できる。

藤沢市
六会
050508
コナラ葉
雌雄同株雌雄異花
花は4〜5月、若葉の展開と同時に咲く。雄花序は、本年枝の下部に多数垂れ下がる。雄花は、黄褐色で小さく、一つの花序に多数付く。
雄花

藤沢市
六会
050415
コナラ雄花
雌花序は、本年枝の上部の葉腋に出るが、小さくて目立たない。花は、1〜2個付く。 雌花

藤沢市
六会
080411
コナラ雌花
堅果は年内に熟す。基部は、小さな鱗片状の総苞片が瓦状についた殻斗(帽子)をかぶる。
ドングリが殻斗に付いていた柔らかい部分は「ヘソ」と呼ばれる。哺乳類のそれと同じ意味である。
★食★オシドリ、オナガカケス、カラス、キジ、キジバト、コガモ、マガモ、ヤマドリ


藤沢市
六会
051010
コナラ実
コナラの葉は、通常秋には黄色く黄葉する。この年の山の秋は、コナラが見事に紅葉していた。赤い色の木がコナラ。 紅葉

群馬県
水上町
赤谷
051112
コナラ紅葉
冬芽は、枝先に多くの芽が集まる(頂生側芽)。卵形、五角垂形で、褐色〜赤褐色で色が濃い。芽鱗は5列に並び、断面は五角形をしている。 冬芽

横浜市
四季の森公園
030215
コナラ冬芽
冬の山を歩いていてドングリを見つけたらよく見てみよう。ナラの仲間は秋から冬の間に、種子から根だけを出している。
これは種子が乾燥に弱いのでそれを防ぐため、また春にいち早く芽を出し光合成を行うため、などの理由が考えられている。
種皮の割れ目から見える子葉が赤みを帯びている。
種子

上野原市
秋山
二十六夜山
130113
1年目の実生。ドングリの仲間は、子葉(双葉)が地上に現れない地下子葉性という特徴がある。
春には本葉がすぐに輪生状に展開し、初夏の太陽の光を効率よく吸収する。
コナラの稚樹の本葉は葉柄が短くミズナラの葉のようにも見える。
実生

上野原市
秋山
120524
綺麗で目立つため、古くから知られている、コナラの芽にできる虫こぶ。ナラメリンゴフシと呼ぶ。タマバチによる。
5月に、虫こぶは最大になり、完熟する。成虫は6月に出現し、地中の根に産卵する。
虫こぶ

群馬県
水上町
赤谷
050604
コナラ虫コブ
オトシブミの一つ。ミヤマイクビチョッキリによる揺籃。初夏に枝を見上げると簡単に見つけることができる。
揺籃を切り落とすことはなく、写真のように葉巻を作り、中に切れ込みを入れて卵を1つ生む。切り落とされるオトシブミノ精緻さに比べると、たいぶ簡素。しかし葉巻の左右の葉の切り込み具合など、どの揺籃も丁寧に作られている。
揺籃

群馬県
水上町
赤谷
100605
コナラ葉揺籃
こぼれ話 「薪」
終戦後、昭和30年代半ばまでの石油の輸入が制限されていたころ、日本の一般家庭の暖房や煮炊き、風呂の燃料は薪、炭、石炭および炭や石炭の粉を固めた炭団(たどん)や豆炭、練炭だった。今の60歳以上の多くの人の記憶の中には、薪での風呂焚き、かまどでの炊飯、練炭や豆炭での炬燵の記憶がある。
薪の生産量のデータを見ると、まさに戦時中には1000万トン/年以上を切り出していた。戦時中はバスやトラックも薪や木炭では走っていた。桜並木なども次々に薪として切られてしまったようだ(参照→「荒川堤の桜並木」)。終戦後5年ほどで300万トン/年に落ち着き、以降石炭や石油に置き換わっていく。今は数万トンあるかないかで、この中には輸入薪も含まれている。最近はピザ窯やパン窯用や薪ストーブ用が増え、震災後は緊急災害対策での備蓄などもあるため生産量は若干増えているとされている。
山小屋に薪ストーブを置き、いろいろと薪材を調達している。面白いことに山村での薪材調達は難しいが、都会では不要な材が思ったより楽に手に入る。つまり山村で薪はどの家でも必需品なので、道端にころがる伐木を勝手に持ってくると怒られる。
東京、横浜で公園や団地の植栽木が邪魔になって伐採した場合、業者は材をお金を払って処分しなければならない。そこで車に積める程度なら、ほぼ確実に譲り受けることができる。また里山整備活動などでも倒したシラカシは誰も引き取りはしないので、これも譲り受けることができる。実際にはこうして都会の木を山小屋では主に使っている。
また、いろいろな樹を燃やしていると薪に適した樹、適さない樹が分かってくる。良い薪とは、着火がよく、火持ちがよく、煙が少ない薪だ。世の中で適した樹とされるのはコナラ、クヌギ、サクラなど、材としては堅い木が多い。確かにコナラなどは煙が少なく(つまり燻ぶらないで発火する)、火持ちが良い。また、オオシマザクラは別名をタキギザクラとも呼ばれ、薪炭材として植林もされていた。
針葉樹のスギ、ヒノキはというと、紙のように燃えてしまうので火持ちは悪い。日本の家屋が良く燃える理由の一つだろう。同じ針葉樹でも、ヒマラヤスギを伐採したので薪にどうか、といただいたことがある。マツの仲間なのでよく燃えて熱量も大きいのでは期待した。が残念ながら薪にはならなかった。発火しないのだ。いくら柴の燃え立つ中に入れても、柴が燃え尽きるとヒマラヤスギは燻ぶるばかりで炎が上がらない。ストーブの中に入れても翌朝、芯の残った消し炭になっている。仲間のレバノンスギが難燃性で、歴史的にさまざまな建造物に用いられたとされる(参照→「レバノンスギ」)のでヒマラヤスギも難燃性なのかもしれない。

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