地下茎・貯蔵根
植物体の地下にある部分は、日常目にすることができないために、その成長過程は分かっていないことが多い。形態的には、根と地下茎の2種類がある。地下茎とは地下に適応した茎のことで、根とは異なり、一般的に葉(鱗片葉など)や節が付随する。
特に草本の繁殖、栽培のために知っておいた方が良い点として、宿根草における地下部の形態がある。また特殊な地上茎として匍匐茎(ストロン)が繁殖でよく用いられる
一般的に以下のように区分され、区分に応じた繁殖方法がある。
根 | 普通根 | 木本、一年草の根 |
貯蔵根 | @多肉根 | |
A塊根 | ||
地下茎 | B根茎 | |
C塊茎 | ||
D球茎 | ||
E鱗茎 | ||
地上茎 | F匍匐茎 |
@多肉根
養分を貯蔵するために主根が肥大した根のこと。分割できないので繁殖には利用できない。
ダイコン
ニンジン
ヤマウド
ムラサキケマン
など。
A塊根
養分を貯蔵するために不定根が塊状に肥大したイモ状のもの。繁殖には芽ごとに切り分けるため、芽の有無の確認が必要(サツマイモは不定芽ができるので例外)。
サツマイモ
ダリア
ヤマトリカブト
ツルニンジン
など。
B根茎
細く長く伸びた一般的な地下茎。通常、節のある分部に分割することで繁殖可能。親株から離れたところの節で発芽・発根した株を吸枝(サッカー)と呼ぶ。
ススキ
ヤマホトトギス
オカトラノオ
ドクダミ
タケニグサ
フキ
リュウノウギク
など
C塊茎
養分を貯蔵するために不定形に肥大した地下茎。葉の変化した薄皮が無い。芽が複数あれば分割して繁殖可能。
ジャガイモ
ヤマノイモ
キクイモ
ナルコユリ
など
D球茎
養分を貯蔵するため地上茎の基部にほぼ球形に形成されたもの。通常芽を1つだけ持ち、葉の変化した薄皮に包まれる。分球した球茎を利用して繁殖させる。
サトイモ
コンニャクイモ
クロッカス
など
E鱗茎
地下茎の周囲に肉質の葉(鱗茎葉)が多数密生し球形になったもの。タマネギのように葉が層状になったものと、ヤマユリのように爪状の鱗茎葉になったものとある。後者の場合は、個々の鱗茎葉から新しい個体を繁殖させることができる。
タマネギ
ニンニク
ヤマユリ
など
F匍匐茎
地面を這って伸びる特殊な茎。匍匐枝とも。通常、節から発芽・発根し新しい個体をつくる。
イチゴ
オリヅルラン
ユキノシタ
など
類似の用語に「球根」がある。「球根」は園芸用語で、上記の形態全てを含む。繁殖のために養分を蓄えた休眠期の根や地下茎を指す。