切り株を見るのも面白い
2018年2月16日
山道を歩いていると木の切り株を目にすることがある。
特に人工林の中では、ちょうど間伐の後だったりすると、多くの切り株を見ることができる。
今回は普段は目にできない、樹木の内側を見せてくれる切り株に注目。
これはスギの切り株である。
綺麗な円形になっていないので良質の材が採れないとみられて、間伐されたのかもしれない。
断面は鮮やかな色から明確に外側・内側に分かれている。
内側の褐色の濃いい部分が心材、白っぽい部分が辺材と呼ばれている。
木の幹で、生きているのは周辺、樹皮のすぐ内側だけである。
つまり細胞分裂をして成長している部分である
専門用語では形成層と呼ばれ、樹皮の内側に薄い衣をまとったように幹を包み込んでいる。
形成層が、内側と外側の両方に向けて細胞分裂をするために、木の幹は年々太っていく。
そして、細胞分裂の速度が春夏秋冬により異なるので年輪ができる。
この写真はヒノキの断面で、年輪はよく見えるが、心材・辺材の区別は明瞭でない。
樹種によって心材・辺材の違いの明瞭さは異なるようだ。
木が生きている(成長している)ときは、辺材も生命活動をしている。
辺材部は、根で吸収した水分を樹冠の葉にまで送るための送水管の働きをしている。
導管と呼ばれる細長い細胞が、連続して長いパイプ状になり辺材を構成している。
この導管が詰まったり、破れたりすると木は枯れてしまうので、
腐朽菌が侵入したり、材を食べる虫が来るとそれらを排除する物質を分泌する。
それがいわゆるフィトンチットなどとも呼ばれる木の香り成分でもある。
写真は伐木された直後のソメイヨシノの切り株。
全体が赤褐色の鮮やかな色になっているは、サクラの樹液がにじみ出てきた色で、主な成分はクマリン。
抗菌作用、抗酸化作用を持つ。
木が年数を経て太くなると、中心部は導管として不要になってくる。
不要になった部分では、材の中に抗菌物質を詰め込んで生命活動としての物質の分泌は停止してしまう。
それで一般的に心材は色が濃くなる。同時に死んだ細胞と言われている。
次の写真は、シラカシの40年〜50年の生きている大木を伐採した切り株である。
辺材は綺麗な状態だが、心材部分が黒っぽくなり、いろいろな模様が出ている。
よく見ると中心部には穴も開いていて、完全に腐朽が始まっているといえる。
そう、生きている木は、何かあると中心から腐ってくるのだ。
つまり生命活動としての抗菌力の方が、死んだ細胞の抗菌力よりも強いことを表している。
次の写真は、別のシラカシの切られた丸太の断面だ。
このシラカシはまだ心材に腐朽菌が入り込んでないので綺麗に見える。
一方、辺材は斑模様が入っている。この斑模様は腐朽菌の繁殖の兆候でもある。
次の丸太の写真はどうだろう?
この木はコナラ。
この断面も心材は綺麗なのに、辺材の腐朽が明らかに始まっている。
何故だろう?
実は2つ上のシラカシの写真は伐採直後であり、
上のシラカシとコナラの写真は伐採の数か月〜1年後に撮っている。
つまり、生きている木は心材から腐朽するが、死んだ木は辺材から腐朽する、ことを表しているのだ。
伐採で急速に生命活動が停止すると、辺材には抗菌物質の蓄積が無いので直ぐに腐朽が始まってしまう。
一方、心材は蓄積の分だけ腐朽が遅くなるが、いずれ腐朽していく。
スギの材が、赤い心材の方が高級とされるのは、その理由による。